10/10-11/3 KOJI THE KITCHEN vol.0 レポート
糀屋三左衛門は10月から、種麹を主軸にした食文化創造の探究プロジェクト「KOJI THE KITCHEN」をスタートしました。キックオフイベントとして行った2021年10月10日、11月3日の「KOJI THE KITCHEN vol.0」では、発酵をはじめとする食文化、デザイン、アートなどに関わるゲストらのディスカッション、東海地方で活躍するフードクリエイターによる麹を使った未知なるメニューの開発などを実施。麹という伝統産業に「美しさ」と「楽しさ」を組み込むことで、次世代へ継承する文化となる可能性の高さを感じさせるイベントになりました。 10月10日 KOJI MEETUP in Nagoya 10月10日のキックオフイベントはオンラインで行われ、約150名が視聴。糀屋三左衛門の29代当主・村井裕一郎と、関谷健氏(関谷醸造代表取締役)、小倉ヒラク氏(発酵デザイナー)、濱田織人氏(ベーシスト・音楽プロデューサー・クリエーティブディレクター・茶道家)らが登壇。麹作りや発酵技法を通じた文化醸成の実践とこれからの可能性について、ディスカッションしました。 ( イベントアーカイブはこちらからご覧いただけます。) 麹作りを『アート』と『ホビー』に まず、村井から種麹とはいったい何か、糀屋三左衛門としてのこれまでの取り組み、そして、近年の発酵ブームについての発表をおこないました。醸造メーカーの原料としての種麹提供の一方で、世界一の評価を受けるデンマーク・コペンハーゲンのレストラン「noma(ノーマ)」が発酵ラボを開設して糀屋三左衛門の種麹をはじめ、あらゆる料理に発酵食品を使っていたり、発酵料理の本も多数出版されたりするなど、特に料理業界で発酵のムーブメントが発生しています。 プロジェクトでは、麹作りを三角形で捉え、「美食やアートという文脈で高付加価値をつけて高さを出していく一方で、初めて麹を作る人のハードルを低くして裾野を広げていく。これまで、醸造の工程の一部だった麹作りを、もっと可能性を広げて『アート』と『ホビー』にしていきたいと考えています」とプロジェクトの目的について語りました。 ゲストプレゼンテーション ゲストによるプレゼンテーションでは、醸造業界の渦中の人物である関谷氏、デザイナーとして発酵文化を見つめなおす小倉氏、アーティスト・フードライターとして業界全体を俯瞰する濱田氏のそれぞれ異なる「発酵」「麹づくり」への視点が展開されました。 地域・発酵・食の融合事業 日本酒「蓬莱泉」で知られる老舗造り酒屋「関谷醸造」(愛知県北設楽郡設楽町)の7代目・関谷氏は、酒造りのほか、名古屋市内で東三河地域の食材を使った飲食店を経営し、地域と発酵を合わせた食を提供しています。また、本社蔵の近くに新設された「道の駅したら」では、発酵の体験ができる「ほうらいせん酒らぼ」を開設。酒造りのプロセスだけでなく、地域全体の風土、歴史などにも興味を持ってもらう施設になっており、地域と発酵と食の融合に取り組む様子を話しました。 発酵起点の旅はまるで異世界体験 小倉氏は、発酵デザイナーとして国内外の発酵文化を調査研究しており、ロングセラーとなっている著書「発酵文化人類学」など本の執筆や、昨年には東京・下北沢に発酵にまつわる食材や日用品を扱う「発酵デパートメント」をオープンしました。地域と深く結びつく発酵の文化的な面をいかした旅の提案も行なっており、「発酵を起点に旅することで、異世界に行ったような体験ができ、その過程の中では地域性やコミュニティの大切さも実感できる」と説明。さらに、微生物の代謝をデジタルセンサーで読み込むことで、手入れや食べるタイミングを知らせる発酵ロボット「ヌカボット」を仏の情報学者と韓国のデータサイエンティストと協同開発するなど、「発酵は、いろいろな領域と結びついていく」と話します。 アート作品としての料理表現 フードカルチャーマガジンRiCE.pressで「一期一食」連載中の濱田氏は、「発酵と芸術。食×アートの視座から」と題してプレゼンしました。世界が注目するガストロミーや、スペインのレストラン「エルブジ」などが創作する科学と融合した芸術的な料理など、アート作品のように料理で表現するクリエイターが増えてきていることを紹介し、麹に高付加価値をつけるヒントを示しました。また、「アートと発酵を掛けていくなら、圧倒的な一人称(複数)をどう作り上げていくかが大事になる。とりあえず誰でもいいから1000人に買ってもらうより、愛してくれる1000人を見つけなければいけない。共感をどう作っていけるかが必要」と言います。 ...